一般社団法人プラスアロマ協会代表理事・齋藤智子さんに学ぶ
「アロマ調香デザイン学」のエッセンス

投稿日:2020年5月5日

最終回
アロマ空間演出の現場から
〜香りがあるライフスタイルの提案へ〜

これまでアロマスクール、マッサージケア、香育など、アロマセラピストとしての様々な活動の中で6,000を超えるアロマ調香を行ってきた、一般社団法人プラスアロマ協会代表理事の齋藤智子さん。
なかでも特にこだわってきた「アロマ調香」と「香りのブレンディング」について、「セラピスト誌」で連載しています。
前回まで5回にわたって、「アロマ空間演出」を行う上で大切にしているポイントを解説してきましたが、最終回はアロマ空間演出導入現場での実践編、そして今後のアロマ空間演出、アロマ空間デザインについてお伝えいたします。
文◎齋藤智子(一般社団法人プラスアロマ協会代表理事)

セラピスト誌で紹介!

コンセプトに沿って、香りをブレンドする

前回はペルソナの設定、空間の確認、そしてそれをもとにした精油の選定までお伝えしましたが、今回はさらに詳しく踏み込んでいきましょう。
まずクライアントのご要望や目的、季節、さらに香りを噴霧させる時間、空間のインテリア、そこに滞在する人などの情報からまとめたコンセプトに沿って、香りをブレンドしていきます。
このとき、ひとつ注意しなければならないことがあります。デスクの上の小さな器の中でブレンドをした香りと、実際に空間に噴霧したときでは香りの印象が変わるということはよくあることです。例えば香水のように鼻先で嗅ぐ匂いの場合は、比較的強い香り(花の精油や濃厚な香りなど)がブレンドされていることも多いのですが、不特定多数が通り過ぎたり滞在するような空間演出の場合は広がりを考え、また濃厚過ぎない香りにする必要があります。
つまり、空間に広がったイメージをしながらブレンドする精油を選ぶことがとても大切になります。

それでは、実際の現場事例をもとに、お話ししていきたいと思います。
ご協力いただいたのは、拙著『アロマ調香デザインの教科書』にも掲載させていただいている、野村不動産ホテルズ株式会社の「NOHGA HOTEL ueno」です。
こちらの主なペルソナは、海外旅行で日本に来られる外国人の方。年齢層の中心は30代以上になります。
ホテルの室内は北欧の色調、また家具やアートなどあちこちにこだわりがある室内は、居心地の良さと落ち着いた雰囲気があります。
1階のエントランス・レセプションエリアのディフューザーは業務用のものを選んでいます。その他フィットネスルームや打ち合わせができるライブラリーラウンジでは、小型サイズのもので空間に香りを噴霧しています。
また、化粧室にもムエット(試香紙)を設置し、香りをお楽しみいただけるようになっています。
こちらでは、「地域とつながる」というテーマのもとに選定した数種類の柑橘、ハーブ、森の木などを重ねた10種類以上を組み合わせています。

このように香りの空間演出を行うとともに、ホテル滞在の思い出やギフトとしてお客様にお持ち帰りいただけるように、NOHGA HOTEL uenoオリジナルのアロマミストもご提案し、採用いただきました。
この香りは、お客様だけでなくホテルのスタッフの皆様からも好評をいただいており、「ホテルのギフトの中でも上位を争う売れ行きです」と嬉しい報告もいただきました(どんな香りかは是非、ホテルを訪れてみてくださいね)。
また、ホテルのグランドオープンから1年後のレセプションパーティの日を境に、「2年目の香り」に変化させたいとホテル側からご要望いただき、1年目の香りと親和性がある香りを使いながら、また違った意味を持つ香りへと変化させています。
この2年目には、ゲストの皆様へのお土産にオリジナルサシェ(香り袋)をお渡ししています。

1年目と2年目の「香りのコンセプト」は、どのように決めたのでしょうか。
まず1年目は創業期ですから、土から芽が出て小さな木となり成長していくというイメージを、パインやヒノキなどを用いて演出しました。そして、日本らしさや森林浴の清々しさを印象づける香りにしました。
さらに2年目からは地域の多くの人に愛され、人々の交流がより広がることを考えました。木々の枝葉がぐんぐんと伸び、大きな樹へ育っていくような、地域の多くの人に愛され、人々の交流がさらに広がるイメージの香りをデザインしています。
このように、「アロマ空間演出」という仕事は、香りを作り芳香器を設置して終わり、ということではありません。当然、「いい香り」を作り続けることは前提で、その上で毎月のブレンドオイルの補充やメンテナンス、そして次へのご提案など、実際にアロマ空間演出がスタートをしてからがクライアントとの関係を作っていく本当の始まりになります。
何をアロマに期待していただいているのか、アロマでできることは何か、またどうしたらお客様やクライアントにとってベストなご提案になるのか。一方の意見だけでなく、「一緒に」作り上げていく。その意識を持つことができれば、より良い関係を築くことができます。
これは決して大きな空間における香りのデザインだけの話ではありません。個人のお客様への香りづくりから、今回のような大型施設の香りの演出まで、同じことなのです。

NOHGA HOTEL ueno香りコンセプト(抜粋)

コンセプト: 地域とつながる
ペルソナ: 外国人旅行者、地元の方
精油: 柑橘類、ハーブ、木など、10種類以上をブレンド
芳香方法: 業務用ディフューザー、小型ディフューザー
展開: オリジナルアロマスプレー(販売用)
その他: 今後、秋葉原でも新ホテルを展開

アロマ空間演出の、ますますの広がりを願って

私が開催しているIAPA認定アロマ調香スタイリスト、アロマ調香デザイナー®の各講座では、「百聞は一見に如かず」ということを大切にしています。まず精油にたくさん触れ、嗅ぎ分けることから講座がスタートします。12時間で100本の精油を嗅ぎ分ける実践的な講座なのです。
また、黒文字や柚子などの蒸留ツアーや、アロマ導入施設へのアシスタント実習など、出来る限り現場に触れられるような仕組みを作っています。

さて、この1年間、これからますますニーズが高まっていくであろう「アロマ空間演出」について、様々な角度からお話ししてきました。
個人でスタートをしてなかなか仕事につながらなかった時代もありましたが、小さな場所でアロマ空間演出をお任せいただき、1つひとつ積み重ねてきました。この連載を通して、現場で必ず必要となる基本的なポイントが、少しでもお分りいただけましたら幸いです。
アロマ調香デザイン、精油の選定、コンセプトのまとめ方、そして現場への導入やその注意点、実際の仕事の進め方等々。これまでなかなか伝えられなかったことも、できるだけ活かせるように現場の話を取り入れながら進めてきたつもりです。
様々な環境の変化もあり、今後ますます精油に期待されることが増えてゆくと実感しています。これからも様々な角度からアロマの使い方、見せ方、提案を行い、それを多くの方が楽しんでいただきたいと思っています。
「香りを楽しむライフスタイル」が定着し、「日常のひとコマ」となるよう、さらに研究と経験を積み、お伝えして行きます。

今回で、このテーマの連載は最終回となります。
これまでを振り返ると、あっという間の1年でした。誌面、web、動画と様々な媒体で、この新しい「アロマ空間演出」について発信させていただき、感謝しております。
同時に、『アロマ調香デザインの教科書』という書籍も出版させていただきました。それらがアロマセラピスト、またこれからアロマを学ぼうとする皆さまのお役に立てることを願っております。
1年間ありがとうございました。

◾講座やイベントのお知らせはこちらから
協会HP : https://www.iapa.or.jp
◾齋藤智子Instagramはこちらから
Instagram : https://www.instagram.com/tomoko_saito_aromadesigner/

最終回の動画解説は、アロマ空間デザインに使う道具の1つであるディフューザーと、全体のまとめについてお話しします。

今月のアロマ空間デザインレシピ
「日常-nichijo-」

キーワード
日常、寄り添う、透明感
レシピ
・オレンジスイート   20%
・ベルガモット     10%
・ペパーミント      5%
・マートル       10%
・ゼラニウム       5%
・スイートマジョラム  10%
・ローズ         5%
・スプルースブラック  20%
・フランキンセンス   10%
・サンダルウッド     5%

世界中で時代の移り変わりを感じる日々。それでも明るい新緑の季節は変わらずやってきます。
私たちが「香り」でできること、それは特別ではなく、日々さりげなく寄り添うような香り。そして香りが一瞬で、私たちの心と体に届けてくれる変化。
そんな日常とワクワクを、これからも積み重ねていきたい。そんな願いを込めて。

Profile

齋藤智子さん
さいとう・ともこ アロマ調香デザイナー®。一般社団法人プラスアロマ協会代表理事。京都で十代続く家に生まれ、伝統的な香り文化に親しむ。一部上場企業勤務を経て、アロマの世界に入り、6,000種類以上のブレンドを制作。調香のプロを育成する傍ら、企業の香りブランディングやメディア掲載も多数。アロマブレンドの第一人者。

書籍 「アロマ調香デザインの教科書」 好評発売中!

香りってすごい。企業はじめ各方面から注目される「精油の力」。
展示会やホテル、イベント会場、オフィスなどに「香り」を利用する企業が増えています。
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