日本のホリスティック医療を牽引しているクリニックのひとつ、「船戸クリニック」(岐阜)では、がん患者を対象とした滞在型施設やメディカルハーバルリトリート施設などを運営し、体系的なホリスティック医療体制を実現させています。今回は、それらの施設の視察体験会にリフレクソロジスト・荻野麻里さんが参加し、レポートをします。
(文・荻野麻里)
がん患者のための滞在型リトリート施設「リボーン洞戸(ほらど)」
4月末に日本ホリスティック医学協会のメンバーと岐阜の船戸クリニック視察体験会に参加した。
船戸クリニックは船戸崇史院長と博子医師夫妻が率いる統合的な医療施設で、ボディ(体)・マインド(心)・スピリット(霊性)にアプローチできるホリスティックな医療体制を実現させている。
百聞は一見にしかず、実際に宿泊体験を通してカラダごと味わった感想をシェアしたい。
まず一泊目は、岐阜県関市にある「リボーン洞戸(ほらど)」。
こちらはがん患者さんが気づきを得て、ありのままの自分へReborn(生まれ変わること)を目指すための滞在型リトリート施設。
一人でここまで来られて自立生活できるがん患者の方が対象で、4泊5日の滞在が基本コース。岐阜の伝統工芸である美濃和紙を随所に使った落ち着いた和室の一人部屋が充実している。

木のぬくもりが心地よい内装。
医師の診察後に、スタッフに丁寧に導いてもらいながら、「リボーン ライフノート」に想いを綴っていくワークやホ・オポノポノ瞑想などを通して自分をみつめ、岩盤浴や森林浴でカラダをほぐし、心理カウンセリングやスピリチュアルヒーリング、笑いヨガなどで心を解放し、カラダに染み込む滋味深いお食事をいただく。
「リボーン五ヶ条〜良眠、良食、笑い、運動、加温生活〜」を実践しながら、“がんの言い分”を聴いていく。それは、がんを通じて、自分の“本来の志”を見つける心の旅となる。

「リボーンライフノート」に想いを綴る。
院長が自ら体験して見つけた“がんの言い分”

「リボーン洞戸」を立ち上げた、船戸崇史院長。
船戸院長は、以前まで外科医として消化器系がんを手術という方法で治療してきた。しかしそれだけではがんを完治できないということに気づき、メスを捨て、看取り中心の在宅医療へと転換していく。それが約20年前のことだった。
順調に事業拡張をさせていったその矢先、自身に腎臓がんが見つかる。
青天の霹靂であった自らの闘病生活の中で、もがき苦しみ、激しく悩み、やがて気づいたことは、「人は誰しも必ず死ぬのだから、今この瞬間を充実させることが一番大切ではないか」ということだった。
そして“がんの言い分”を聴き、生き方を転換することを手助けするような施設が必要だという想いに至る。そうして「リボーン洞戸」は造られた。
こんなにも心身に優しくてストレートに響く施設が日本にあったとは! 自分を変えるには相当な勇気と覚悟が必要だけれど、必要な方々にぜひ知って欲しい施設である。
滞在型メディカルハーバルリトリート施設
二泊目の滞在は岐阜県養老町のメディカルハーバルリトリート施設「Villa CAMPO ヴィラ カンポ」。こちらは誰でも宿泊することができる。
敷地内には、一般保険診療の「船戸クリニック」棟があり、薬膳レシピを提供する「フナクリ食堂」や、カウンセリングやセラピーも行う「統合医療センター」棟がある。さらにその先のオーガニックガーデン内に、滞在型メディカルハーバルリトリート施設「ヴィラ カンポ」はある。
到着すると、食医漢方医 船戸博子医師によるおもてなしランチから始まった。「おくすりなごはん」を先生自ら運んで食材の説明をしてくださり、お腹も心もほっこりする。

診察する船戸博子医師。

「おくすりなごはん」
そのあとは船戸院長、博子先生のレクチャー、ヒーリングセラピー体験、ヘルシー薬膳ディナー、焚き火ワーク、翌朝の気功、博子先生によるガーデン薬草解説、漢方診療と、貴重な体験が次々と続く。

博子先生による薬草ガーデンのレクチャー。
各宿泊部屋はインテリアがすべて違っていて、博子先生のセンスとおもてなし心が随所に光る。ここで宿泊者は忙しい日常から離れて自分らしく生きることに向き合う時間を過ごす。
自家製のハーブティーやお風呂用ハーブが女子に嬉しい。今注目のオリジナル フェムケア製品もさりげなく置かれてあるのはさすが。
ここは、地域医療から統合医療、食事療法、高齢者施設、各種セラピーが並列に揃い、ボディ・マインド・スピリット全てが癒され、魂が喜ぶ理想郷のような場所だった。
●取材者プロフィール 船戸クリニック
岐阜県養老町に1994年2月に開業。以来、西洋医療、専門治療、伝統医療をあわせた統合医療をベースに、地域住民の皆さま、がんの専門治療を必要とされる皆様へ“キュア(医療)とケア(癒し)”を提供している。医療・介護保険の適用範囲の治療から自費治療まで、さまざまな選択肢を用意し、お一人おひとりにあわせた医療・介護が特徴。『がんが消えていく生き方』(船戸崇史 著)、『「死」が教えてくれた幸せの本質』(船戸崇史 著)、『おくすりなごはん』(船戸博子 著)。
●著者プロフィール 荻野麻里
ARCB (アメリカリフレクソロジー認定協会)全米認定リフレクソロジスト。ICR (国際リフレクソロジスト学会)日本コーディネーター。日本ホリスティック医学協会認定療法士。2000年より東京にて、セラピーワークとスクールを個人開業。杉並セラピールーム「Sole to Soul Studio」主宰。