【連載/植物とともに暮らす】第6回 変容・浄化・再生のハーブ

投稿日:2026年5月4日

 


第6回 変容・浄化・再生のハーブ


アメリカ西海岸の北カリフォルニア・バークレーに暮らす、民族植物学者でハーブ研究家のウィーバー佳奈さん。海外をフィールドに、さまざまな土地を訪れ、人と植物がどう関わってきたのかについて研究と対話を重ねてきました。
連載第6回目の今回は、春の植物であるネトル(セイヨウイラクサ)についてご紹介したいと思います。

文・写真◎ウィーバー佳奈
プロフィール写真◎WAvewell Earth Studio

ネトルの基本情報・語源

ネトル(学名 Urtica dioica 和名 セイヨウイラクサ)はヨーロッパ・アジア・北アフリカ原産の多年草で、現在は世界各地に分布しています。湿気のある、水はけの良い肥沃な土壌を好み、道端や森の中などさまざま場所で見かけることができます。

西洋ハーブの中では欠かせない存在となっており、ハーブティーをはじめ、いろいろな方法で活用されてきました。

ネトルの葉

「イラクサ(刺草)」の名の通り、葉や茎に多くの弱毒性のある細かい刺毛(しもう:トゲトゲの毛)を持ち、素手で触れると痛み・痒みを伴う皮膚の炎症をもたらすため、採取する際には手袋などを使用する必要があります。

学名の「Urtica」もラテン語で「刺す・刺激する・チクチクする」などの意味を持ち、英語では「stinging nettle(刺すネトル)」と呼ばれることもあります(「ネトル」という単語自体、英語では「イライラさせる、怒らせる」といった意味も持ちます)。

刺毛の毒は水に漬けたり加熱することにより無毒化し、食べたり薬草として用いることが可能になります。

ネトルの栄養とエネルギー

ネトルは、春先に真っ先に生えてくる植物の1つです。

アミノ酸・タンパク質・鉄分・カルシウム・マグネシウムなどの栄養を豊富に含むため、活動的な春に向けて身体を目覚めさせ、エネルギーを増強させるハーブとして重宝されます。

北米のネイティブアメリカンの人々も、ネトルの若い葉を早春の貴重な栄養源として活用したという記録が残っています。デトックス作用もあるため、季節の変わり目のデトックスもサポートしてくれます(*妊娠中の方、小さなお子さまは使用に注意する必要があります)。

医療占星術では、ネトルは火星と紐づけられます。火星は怒りや情熱、刺激、行動力の星です。鋭い毛を持ち、肌に触れると燃えるような感覚と刺激をもたらす性質は火星的です。また、鉄分が豊富で、血液の浄化・造血作用がある点からも火星の性質に通じるものがあります。チャクラでは、身体の基盤を支える第1チャクラとの関連を持ちます。

ネトルは乾燥させてハーブティーとして飲んだり、煎じた液体を外用薬として用いる方法が一般的です。茹でるとほうれん草のような風味になり、ヨーロッパを中心に、世界各地でスープやシチュー、煮物、ソース、パンの具材、アルコールの原料などに用いられてきました。炒めたり、おひたしにしても美味しいです。

ネトル、トゥルシー、ペパーミント、スギナ、レッドクローバー、ローズのお茶

ネトルの神話と物語

古くからヨーロッパの人々の生活圏に広く分布していたネトルは、物語や民話にも多く登場します。特に、生と死にまつわる植物として扱われるケースが多く、ケルトの民話では、ネトルは天と地、生者の世界と死者の世界の「境界」に位置する植物として登場します。

ネトルは異なる世界同士の境界領域の守護者として、また両世界をつなぐ植物として描かれます。

北欧ではネトルの繊維でできた布を死者の身体を包み保護する際に用いたほか、ウェールズでは病者の枕の下にネトルを置き、翌朝のネトルの色褪せ具合でその者が生き延びるかどうかを占う風習もありました。人が亡くなった場所の土からネトルが生える、という民話もヨーロッパの各地にあります。

これには、冬という生命にとってはある種の「眠り・死」の季節から、春という「活動・生命」の季節に移り変わる最初の時期にネトルが生えることや、道端などの「境界」領域にネトルは生えやすいことが関係しているかもしれません。

またネトルは肥沃な大地を好むことから、動物の死骸が分解された後のリン酸・カリウム・窒素などの栄養が豊富な土壌にネトルが生えたのを見た人が、そうした要素とネトルを結びつけたのかもしれないと想像します。

そんなネトルを使った、デトックスにオススメのハーブティーをご紹介します。

 

●レシピ:ネトルのデトックス・トニック

材料

・ネトルの葉(乾燥したものなら 1/8カップ、フレッシュなら1/2カップ)

・水 1カップ

春のはじまりのエネルギーを意識したブレンド

つくり方

  1. ネトルを加えた水を煮立たせ、沸騰したら火を弱め、数分間煮出す。長く置くほどに成分と風味が強く抽出される。
  2. 好みでハチミツやレモンやミントを加える。

おわりに

北半球はこれから夏至に向けて、ますます太陽の光と自然界のエネルギーが増していきます。

皆さんは、これからの季節に、何を創造していきたいでしょうか。新しい季節に、境界線を越え、前に進むことを後押ししてくれるネトル。皆様もネトルの助けを借りながら、楽しい季節をお過ごしくださいね。

 

次回は5月18日(月)配信予定です。お楽しみに!

ウィーバー佳奈さん 

植物研究者(民族植物学・環境学)。東京大学とオランダ・エラスムス大学で修士号を取得、カリフォルニア大学博士課程で環境学・生態学・民俗学を横断的に研究。2015年よりアメリカで暮らし、ネイティブアメリカンのコミュニティから伝統知を学ぶほか、アフリカ・中米・欧州などでのフィールド経験を持つ。現在は大学を退き、ハーブによるセルフケアやウェルビーイングをテーマに、SNS、YouTube、雑誌、講演などで発信。科学と伝統知、感性の両面から植物の魅力と可能性を伝えている。

 

●Seed from Earth hhttps://www.seedfromearth.com/
●Instagramアカウント @seedfromearth

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