触れるだけで「変化」が起こる!?
「タッチングの奇跡」は、こうして起こす!!
(「セラピスト4月号」第2特集連動記事)

投稿日:2021年3月15日

現在発売中の「セラピスト4月号」では「癒しのタッチセラピー特集」を掲載、タッチングの際に必要な心構えや触れ方、タッチセラピーによる解剖生理学的効果などについて詳しく紹介しています。
その中のPart1では、「触れて癒す〜クオリティ・オブ・タッチ」のクラスを主宰する小松ゆり子さんが、タッチングの奥深さについて解説。セラピストとしての長年の経験から、「身体に手を当てるだけでも、皮膚の下では、大きな変化が起きている」ことを実感し、こうした「変化」を起こすタッチングのバリエーションや工程を丁寧に伝えています。
ここでは、本誌では伝えきれなかった、「タッチングの奇跡」とも言える「触れるだけで起きる変化の源」について、小松ゆり子さんに聞きました。
取材・文◎本誌編集部

セラピスト誌で紹介!

“自分自身を整えること”が
「変化」のファーストステップ

私たちの心には、日々の生活の中でさまざまな「感情」が生まれますが、常にポジティブなことばかりではありません。時にはネガティブな感情が心を支配してしまうこともあるでしょう。セラピストの思いや気持ちなど多くの情報は、「手」を通してクライアントに伝わるため、施術中に負の感情がクライアントに伝わってしまうこともあります。だからこそ、日頃から自身の心を整えておくことは、セラピストにとってとても大切なことなのです。

一方で、セラピスト自身のコンディショニング調整も、大きな課題となります。それが良質なタッチを生み出すことは、言うまでもありません。
このように、クライアントに触れる前にセラピスト自身が心身を整えることは必須と言えます。「自身の状態」が整った上で、実際のタッチングの際には「クライアントの状態」に意識を向けます。そしてその時に受け止めた自身の「感情や感覚」を観察することが、身体に手を当てて変化を起こすためには、とても大切となります。

1. 自分自身の“心の状態”に意識を向けよう!

「セラピスト自身の心が疲れたままでは、クライアントに良いエネルギーを届けることは難しいでしょう。そこで大切なことは、セラピスト自身が心身のつながりを理解し、心地よさを取り戻す方法を知ることなのです」と小松さんは言います。
小松さんがはじめに重視したのは、自分自身の心のケアでした。今回は、普段実践している数ある瞑想法の中から、呼吸に意識を向けながら行う「慈悲瞑想」をピックアップ。

「慈悲瞑想とは、心を整える瞑想の一つ。“私”と“他者”を分けて眺め、“共感”と“慈悲”を分けることで、セラピストが陥りやすい「共感疲労」を防ぐトレーニングになります。」(小松さん)

① 息を吐きながら「私が幸せでありますように」と唱える。3回繰り返す。
② 息を吐きながら「私が健康でありますように」と唱える。3回繰り返す。
③ 息を吐きながら「〇〇さんが幸せでありますように」と唱える。3回くりかえす。
④ 息を吐きながら「〇〇さんが健康でありますように」と唱える。3回くりかえす。
⑤ 息を吐きながら「私をきらっている人も幸せでありますように」と唱える。3回くりかえす。
⑥ 息を吐きながら「私をきらっている人も健康でありますように」と唱える。3回くりかえす。
⑦ 息を吐きながら「私がきらいな人も幸せでありますように」と唱える。3回くりかえす。
⑧ 息を吐きながら「私がきらいな人も健康でありますように」と唱える。3回くりかえす。
⑨ 息を吐きながら「生きとし生けるものが全て幸せでありますように」と唱える。3回くりかえす。
⑩ 息を吐きながら「生きとし生けるものが全て健康でありますように」と唱える3回くりかえす。

この慈悲瞑想を取り入れることで、自分自身の心に対する慈愛の眼差し、そして、自分以外の全ての人への慈愛の眼差しを養います。相手に寄り添いながらも、自分自身の心と身体のつながりを心地よく保つことができるようになるでしょう。

2. 自分自身の“身体の状態”に意識を向けよう!

つづいて小松さんが着目したのは、身体の状態を整えるということ。
「クライアントの身体に触れる前に、自分の身体の状態に意識を向けなければなりません。『頭蓋骨盤メディテーション』を行うことで、やわらかく脱力した中心軸をつくっていきます。」と小松さん。

はじめに、立つ、座る、そして歩きながら、今の自分のバランスを感じてみます。
次に、あぐらを組むか椅子に座り、坐骨で座ることができているかを確認します。
その後、目を閉じ、深呼吸をしながら、ゆりかごのような形をした骨盤内側のスペースを意識します。
そして骨盤から背骨を通り、その先に風船のように浮かんでいる頭蓋骨をイメージします。その頭蓋骨(風船)をそっと手に取り、骨盤のゆりかごのなかで大事に抱え、ゆらゆらと揺らしながら良い位置に収まっていくようイメージします。ゆっくりと目を開け、バランスを確認します。

このメディテーションを行うことで、「柔らかい軸を保ち、ニュートラルな状態で人に触れることができる」と小松さんは言います。

また、施術を行っている時には、自分自身の身体にも意識を向けています。これは、クライアントの心と身体を癒すためには、施術者自身への負担が少なく、自然な状態でいることが大切だから。それでは小松さんは、施術中にどんなことに気をつけているのでしょうか?
「まずは、ベッドを自分に適した高さに合わせること。そして余分な力を入れず、施術者自身が心地よくリラックスした状態でいられるよう心がけます。その時の、“そのクライアント”に合ったタッチングを行えるよう、立ち姿と呼吸を意識して適度な脱力を維持します」(小松さん)

3. “相手”に意識を向けて、「ただ共にある」時間を作ろう!

自分自身の「心と身体の状態」に意識を向けて、フラットな状態を保つことができれば、より感覚は研ぎ澄まされて、クライアントの情報を正しく受け取ることができるようになります。最後に、クライアントの状態を観察しながらも「ただ共にある」方法を聞きました。

「例えばクライアントの頭部に触れている時。頭部は体重の約1割の重さがあると言われています。体重50kgの人であれば、頭の重さは5kgになります。
この重みの「受け皿」になるようなイメージで、手のひら全体で支えます。決して「つかむ」のではなく、脱力した手のひらで柔らかく重みを受け止めましょう。そして、クライアントを無理にリラックスさせようとするのではなく、自然にリラックスして重みが変化してゆくのを待ちます」(小松さん)
このように、相手に意識を向けてその時々の感覚を心に刻みつつも「無」に近いニュートラルな感覚を保ちます。この「ただ共にある」時間こそが、「タッチの奇跡」を起こすために重要なことなのです。

深い知識と豊富な経験を持つ小松さん。その深い感性から生まれた言葉には、小松さんにしか語ることができない“思い”や“考え方”で溢れていました。

セラピスト4月号では、タッチングのバリエーション(触れる・ゆらす・押す・さする・叩く)に合わせ、身体の中で起こる変化について詳しく紹介しています。小松さんの奥深い世界をご堪能ください。

プロフィール

小松ゆり子さんこまつゆりこ Touch for World代表。パーソナルセラピスト。日本タッチ協会理事。レコード会社で宣伝マンとして活躍した後、セラピストに転身。ホテルや美容クリニック併設のスパに勤務後、スクール講師を経て東京・表参道にサロンをオープン。いつでもどこでも施術できるノマディック・セラピストとしても活動。Touch for World Therapy Schoolの講師活動やメディアでの執筆活動も行っている。

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