第4回 集中力アップのハーブ

アメリカ西海岸の北カリフォルニア・バークレーに暮らす、民族植物学者でハーブ研究家のウィーバー佳奈さん。海外をフィールドに、さまざまな土地を訪れ、人と植物がどう関わってきたのかについて研究と対話を重ねてきました。
連載第4回目の今回は、生命にとっても、人間にとっても新しい季節の始まりである春にこそ、暮らしに気軽に取り入れたいハーブについての話題です。
文・写真◎ウィーバー佳奈
プロフィール写真◎WAvewell Earth Studio
春、始まりの季節
いよいよ春本番、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
私の暮らすカリフォルニアでは日ごとに日差しが強くなり、日中は汗ばむほどの陽気になってきました。自然界でも次々と季節の植物が芽吹き、鳥や虫や動物たちが活発に動き回り、眩しい太陽の下で生命を謳歌しています。
冬の間に眠っていた大地や植物の種、虫や動物たちが目を覚まし、暗く静かな冬から一変、こうして毎年必ず訪れる春の賑やかな風景を眺めていると、自然界に備わる美しい循環のリズムに感嘆せずにはいられません。
春は、新学期や仕事など、日本で暮らす多くの人にとっても新しい生活サイクルの始まりのタイミングです。新しい気分で暮らしをスタートしたり、心機一転何か新しいことに取り組みたいと思う方も多いのではないでしょうか。

春の風景。写真はカリフォルニアポピー
初心者でも育てやすい、春のおすすめハーブ
そこで今回は、意識を集中して何かに取り組みたい方のために、集中力アップに役立つハーブをご紹介します。
・セージ Sage… 「賢者」の意味も持つセージ。記憶力、集中力のサポートとして何世紀も用いられてきました。ストレスを軽減したり、安心感をもたらしたり、空間や意識を浄化する作用があります。アロマテラピー、お香、お茶などに活用できます。
・ローズマリー Rosemary… ローズマリーは意識の明晰さをもたらしたり、認知機能を向上させたり、エネルギーを浄化する作用があります。アロマテラピー、お茶、料理などに活用できます。
・レモンバーム Lemon balm… レモンバームにはリラックスを促したり、気分を明るくするサポートをしたり、マインドをクリアにする作用があり、認知力や記憶力の向上も期待できます。お茶、アロマテラピーなどに活用できます。
・トケイソウ Passion flower… 心身の落ち着きや、ストレスの軽減、睡眠の質の向上をもたらす作用があります。お茶、ティンクチャーなどに活用できます。
・ツボクサ Gotu Kola… 意識を明晰に、クリアにする作用があり、集中力・記憶力を高めます。ストレスの軽減も期待できます。
・ホーリーバジル / トゥルシー Holy basil… 神聖なハーブとして扱われてきたホーリーバジルは、アダプトゲン(ストレス耐性を高めるハーブ)としても注目を浴びています。リラックスを促し、意識を集中しやすくする作用があります。お茶やティンクチャーなどに活用できます。
・ミント Mint… スペアミント、ペパーミント、アップルミントなどさまざまな種類があり、いずれも気分のリフレッシュや、明晰さや集中力をサポートする作用があります。お茶やオイルなどに活用できます。

レモンバーム

トケイソウ
集中したい時のハーブティー レシピ
●材料(カップ2杯分)
・ペパーミント(ドライ) 大さじ1
・トゥルシー (ドライ)大さじ1
・レモンバーム (ドライ)小さじ1
・甘味料(蜂蜜・メープルシロップ・砂糖など) お好みで
●つくり方
・お湯出し:ハーブを混ぜて、ティーポットに入れ、お湯を注ぐ。2〜3分蒸らして、ハーブを濾して、好みで甘味を加えていただく。
・水出し:ハーブを混ぜて瓶などの容器に入れ、水を加えて冷蔵庫で一晩置く。ハーブを漉して、好みで甘味を加えていただく。お湯出しよりもマイルドで甘みのある味になる。
ハーブティーというとお湯で抽出する方法が一般的かと思いますが、私は水出しのハーブティーの風味も大好きです。ゆっくりと時間をかけて抽出されるので、お湯で抽出した時よりも味がまろやかで、その植物の持つ微細な香りや雰囲気がそのまま味わえるような気がします。ドライハーブでも、フレッシュハーブでも楽しめます(フレッシュハーブを用いる場合はハーブの分量を適宜調整してください)。

集中力アップのハーブティー
自然界のリズムと心身のリズム
ものごとに集中した後は、しっかりと休息することが大切です。集中し続けた身体やマインドを十分に休め、リフレッシュすることで、私たちはまた”美しい集中力”を発揮することができます。
人間の社会では、ついつい「成長・拡大」だけに焦点を当てて、あたかも物事が右肩上がりに昇り続けるかのように捉えてしまいがちです。より高い目標を設定したり、規模を拡大したり、能力を向上させたり、より深い領域へ潜ったり…… そうした意識は私たちに美しい景色の変化を見せてくれる一方で、そこだけに焦点を当てると大切なものを見落としてしまいがちです。
成長や拡大といった価値が「良いもの」で、それ以外の価値(休息・スローダウン・スケールダウン)を「悪いもの」(怠け・衰え・退化)と捉えてしまうと、うまく休めなかったり、休むことに罪悪感を感じてしまったりして、結果的に疲弊してしまいます。
一方で、自然界を眺めてみると、加速したものは減速し、成長したものは世代交代し、拡大したものは収束し、すべての物事は絶えずぐるぐると循環しています。
春に生命が活動を開始し、夏にかけて太陽の力が最も強くなる頃に生命は活動のピークを迎え、秋はスローダウンするとともに収穫を祝い、冬はゆっくりと休息する。1日の中でも、私たちは日が昇る朝に活動を開始し(春)、太陽が真上に来る頃に活動のピークを迎え(夏)、午後にスローダウンし(秋)、夜は休息する(冬)。女性にとっては毎月ホルモンの変化があり、そのホルモンの波も春、夏、秋、冬と酷似したサイクルを刻んでいます。
私たちの心臓の鼓動が規則正しくリズムを刻み、呼吸機能が息を吸って吐いてのサイクルを繰り返すように、私たちを含む大きな自然も、鼓動を打ち、呼吸し、めぐるサイクルを繰り返しているようです。
何か自分の情熱を注ぎたいことに集中した後は、身体と心のバランスをとってあげることが重要です。しっかりと休息や睡眠をとったり、運動、食事、掃除、ジャーナリング(感じていることや思っていることを、人目を気にせずノートなどにありのままに書き出す)をして感情や体験を消化するなど、集中した分量と同じ分だけ、頑張ってくれた私たちの心身を緩める作業が必要になります。
自然界も、私たちの心身も、それぞれ美しいリズムを刻んでいます。私たち人間はついついそのリズムを忘れてしまうこともありますが、植物たちは自然界と私たちの橋渡しとなり、そうしたリズムを思い出す手助けをしてくれる力があるように感じます。
皆様も、自然界のリズムと、自分の心のリズムと、身体のリズムを感じながら、新しい季節を楽しんでいただけたらと思います。
次回は4月20日(月)配信予定です。お楽しみに!

ウィーバー佳奈さん
植物研究者(民族植物学・環境学)。東京大学とオランダ・エラスムス大学で修士号を取得、カリフォルニア大学博士課程で環境学・生態学・民俗学を横断的に研究。2015年よりアメリカで暮らし、ネイティブアメリカンのコミュニティから伝統知を学ぶほか、アフリカ・中米・欧州などでのフィールド経験を持つ。現在は大学を退き、ハーブによるセルフケアやウェルビーイングをテーマに、SNS、YouTube、雑誌、講演などで発信。科学と伝統知、感性の両面から植物の魅力と可能性を伝えている。
●Seed from Earth hhttps://www.seedfromearth.com/
●Instagramアカウント @seedfromearth








