白髪染めを手放したら、心が解放されました —近藤サトさんの「グレイヘア」ライフ―

投稿日:2019年8月9日

「セラピスト」8月号のヘッドセラピー特集において、“グレイヘア”をテーマに取材をさせていただいた近藤サトさん。ある日突然、グレイヘアでテレビに登場した近藤さんに驚かれた方も多いはず。白髪染めをやめたことによる変化、そして、ありのままの自然体で生きることで気づいたことなど、ここでは、本誌では紹介しきれなかったお話をご紹介します。
取材・文 小平多英子

セラピスト誌で紹介!

日常の煩わしさから逃れたい。そんな思いから手放した白髪染め

20代の頃から白髪がちらほらと目立つようになり、30代で白髪を染めはじめました。女子アナという職業は、いつまでも若くてキレイでなくてはいけない、と思い込んでいたので、白髪染めはしなくてはならないことだと思っていました。でも、根本が伸びると隠さないといけないとか、薬剤に対するアレルギー反応も出るようになり、だんだん染めることが煩わしくストレスになっていきました。

そういった価値観が変わったきかっけが東日本大震災でした。自宅に備えている震災グッズの中に白髪染めも準備しないといけない、って思った時のこと。ふと我にかえって、なぜ“白髪染めが必要なのだろう”と疑問に感じるようになったのです。女性は若くキレイでいなくてはならないと、社会に追い込まれているのではと考えるようにもなりました。私が染めたくて、染めているのではない。そこに気づいた時に、吹っ切れるものがありました。

ちょうど時代的に“多様化”という流れがあり、これも白髪染めをやめるいいチャンスだったと思います。おそらく20年前だったら理解されなかったのではないでしょうか。私以前にも、草笛光子さんや中尾ミエさんなど、グレイヘアにされている大先輩がいらっしゃいます。でも、誰もそこになろうとはしなかったですよね。私が白グレイヘアにしたタイミングが良かったのかもしれませんが、共感の声を多く頂き驚いています。

でも、白髪の自分というものに慣れて、気持ちをシフトさせるまでにはそれなりの時間がかかりましたね。最初は、美容室に予約を入れて白髪染めをするというルーティンをやめてストレスもなくなり、新しいステージに立って楽になるつもりでした。でも、ショーウィンドウなどに映った自分が老けて見えるのでびっくりするわけですよ。

いっぽうで、新たな発見もたくさん! 髪は顔の額縁の役割をしますので、黒髮からグレイヘアになり顔まわりの印象が変わりました。髪の白い色はハレーション効果をもたらし、顔色が良く見えるといったメリットがあるのです。さらに、ファッションにも影響がありました。白髪は“ホワイト”ですから、どんな色の洋服とも親和性があります。これまで着なかった鮮やかな色が着こなせるようになり、これまで手を出ださなかったようなヨーロッパブランドの服も選ぶようにもなりました。

また、人は思った以上に、見た目、容姿を気にするのだということを実感しました。グレイヘアにしたばかりのことですが、周りの人は“いいね”とも言えず、かける言葉がなかったのでしょうね。特に、男性の方は、明らかに外見が変わっている私に日本語を持ち合わせていなく、何もなかったかのようにされる方が多かったです。

見た目の判断という点では、白髪=年寄りという思い込みが強く、白髪というだけで老人扱いされるようにも(笑)。絵本などの昔話には、必ずといっていいほど白髪のおじいさんとおばあさんが登場します。物語を通して小さい頃から、“お年寄りは白髪”と刷り込まれているのでしょう。そして、自分が老人扱いされて初めて気づいたことは、年寄りに対する尊敬の念が希薄ということでした。特に、都市部の方がその傾向が強いですね。昔話にもあるように、その昔、老人というのは若い人たちに「知恵」を伝える存在。でも、核家族化や地域社会との関わりが薄くなった現代では、年老いた方たちが知恵を伝える場所がなくなりました。お年寄りの方たちも、老人扱いされるのを敬遠し、若い世代と友達感覚でつながっていたりして、尊敬される場面も減ってきたのでしょう。それどころか、少子化による肩車社会が想定される社会背景のなかでは、重荷と思われるようにさえなっているのです。ですから、お年寄りの方にはセカンドキャリア、サードキャリアとして、年寄りらしく振る舞い、自分の経験を生かして、広い意味での社会のコンサルタントとして活躍してもらえたらな、と感じています。

グレイヘアにしたのはファッション的な要素が強かったのですが、このような社会のことまで考えるようになったんですよ。

「グレイヘア」にはさまざまな反響がありましたが、同世代だけなく、若い方達から「素敵」と共感されるとは思ってもみませんでした。それは、髪の色ではなく、外見と一緒にナチュラルに年を重ねることへの共感なのかもしれません。若い人たちは、いい意味で先輩扱いしてくれるようになりました。このことで、私自身も先輩として頑張ろうと自覚するようにもなりました。

捨てたのは、白髪染めだけじゃなく、若さに対する執着。若さにしがみつくことを整理したら、心がすっきりし、新たなスペースが生まれました。まさに断捨離です。空いたスペースに、これから何を入れていこうか、何を学ぼうかという次ステージにあがることができましたね。人のキャパシティは限られていますから、内面を成長させることは、自分は若いんだと騙していると難しいんです。ありのままの自分を受け入れ、健康で人生を深めていきたいですね。

Profile

近藤サトさんこんどうさと フリーアナウンサー・ナレーター。日本大学芸術学部放送学科卒業後、フジテレビに入社。1998年よりフリーとなり、現在はテレビ番組のナレーションをはじめ、朗読などで活躍。日本大学芸術学部放送学科特任教授としての顔も。近著に『グレイヘアと生きる』(SBクリエイティブ)。

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