【連載/植物とともに暮らす】第3回 春に育てるハーブと種について

投稿日:

 


第3回 春に育てるハーブと種について


アメリカ西海岸の北カリフォルニア・バークレーに暮らす、民族植物学者でハーブ研究家のウィーバー佳奈さん。海外をフィールドに、さまざまな土地を訪れ、人と植物がどう関わってきたのかについて研究と対話を重ねてきました。
連載第3回目の今回は、待ちに待った春に楽しむガーデニング、そして種の話題です。初めての人でも育てやすいハーブ、そして日本にもある、種の「シードライブラリー」「種の交換会」について紹介します。

文・写真◎ウィーバー佳奈
プロフィール写真◎WAvewell Earth Studio

 

春に育てるハーブ

北半球では春分を過ぎて、いよいよ季節は春です。

私の暮らす北カリフォルニアのバークレーでは、日毎に陽差しがあたたかくなるのが感じられます。春は、生命が芽吹く季節です。3月は若芽の鮮やかな緑の中に、カタバミや菜の花のまばゆい黄色、ハナズオウや木蓮のピンク、カリフォルニアポピーのオレンジ、藤の花の紫色など、色とりどりの花が次々と現れます。それに合わせて虫や鳥たちもせわしなく飛び回り、ミツバチ・ハナバチの羽音やハチドリの鳴き声が空に響き、花の間をチョウがゆらゆらと羽ばたいている様子は、まるで美しい自然界のショーのようです。

春は、絶好のガーデニングの季節でもあります。この春、庭やベランダがある方はハーブを自分で育ててみるのもおすすめです。「ハーブ」と呼ばれる有用植物群にはそもそも丈夫で生命力が強いものが多く、野菜などに比べて初心者でも比較的育てやすいものが多くあります。香りの強いハーブはアブラムシやナメクジなどを寄せ付けにくいことから、野菜との寄せ植えにもおすすめです。

採れたてのフレッシュなハーブは生命力が高く、香りや風味も乾燥させたものとはまた別格です。自分で育てることにより、それらの成長過程を見守ることができ、その植物と特別な関係を築くこともできます。また、ハーブを植えることでそれが虫や鳥など花の蜜を食糧源とする生き物の蜜源となったり、人間だけではなく生態系を豊かにすることにも貢献します。

生命が芽吹き輝く春、ローズマリーもミツバチも嬉しそう。

カタバミ、花は酸っぱい味がするが、食べることができる。

ちょうどこの記事を書いている今は木蓮が満開を迎えており、私は花びらをそのまま食べたり、蕾をお茶にしたり、シロップにしたり、ピクルスにしたり、乾燥させたり、と木蓮と戯れては華やかな香りと苦味のある爽やかな味にうっとりする日々を送っています。

花をいただくときは必要な分だけいただき、余ったとしても大地に返すようにしています。収穫の際にその植物に尋ねる習慣は長年ずっと続けてきたため、今では息子も真似て実践してくれています。

 

初心者でも育てやすい、春のおすすめハーブ

ローズマリー日当たりと風通し、水はけの良い土壌を好む。丈夫で乾燥にも強い。オイル、ティンクチャー、お茶、料理にも。ミツバチやハナバチが花の蜜を好む。

トゥルシー(ホーリーバジル)インドで神聖な植物として扱われてきた。お茶にすると神経を落ち着け、ストレスを緩和する作用がある。花の蜜はミツバチが好む。庭を守護するとも言われる。

ラベンダーローズマリー同様、地中海原産の植物で、日当たりと風通し、水はけの良い土壌を好む。乾燥に強い。香りが高く、リラックス効果がある。

カレンデュラ(キンセンカ)太陽のように美しいオレンジ色の花。花は食べることができる。肌などの炎症を抑える作用があるので、オイルで抽出して肌のケアにも用いることができる。

タイム乾燥に強く、風通しを好む。抗菌作用・抗炎症作用・消化促進作用などがある。料理やお茶に用いることができる。

ミント湿気を好む。爽やかな香りでメディスンにも料理にも重宝する。増えやすいので地面ではなく植木鉢で育てること。

セージ乾燥に強い。抗菌作用がある。お茶や料理にも用いることができる。プロテクション(保護)の効果があるとも言われる。

ナスタチウム可愛らしい花を咲かせ、花も葉も種も食べられる。若い種はピクルスにするとケーパーのような味になる。ビタミンCが豊富で、抗酸化作用がある。アブラムシを寄せ付けにくいことから、野菜との寄せ植えにもおすすめ。

春の野の花。タンポポ、ハナズオウ、ボリジ、カタバミ、ラベンダー、ソラマメの花、ナスタチウム(いずれも食べることができる)。

種を地域でシェアする仕組み 〜種の交換会・種の図書館・シードバンク〜

ハーブを育てる際に、苗から育てる方法と、種(たね)から育てる方法があります。どちらの場合も、可能であれば農薬や化学肥料を用いない有機栽培のものが環境にも健康にも優しくておすすめです。

また、種は園芸店などで購入することもできますが、地域で「シェアする」取り組みを活用することもできます。

たとえば、春の種蒔きの季節には、カフェや公民館、イベントスペースなどで「種の交換会」を開催している自治体が日本全国の各地に存在します。興味がある方はお住まいの地域で開催している場所がないかどうか、ぜひ検索サイトやSNSなどで調べてみてください。

また、「シードライブラリー(種の図書館)」「シードバンク(種の銀行)」といった形で、年中地域に種を供給している仕組みもあります。これらはカフェや店舗や公共施設などの一角に、さまざまな植物の種が詰まった棚や箱を設置して、誰でも自由に種を持ち帰って庭や畑に植えることができるという仕組みです。多くの種はドネーションで集められており、自家採種した種を持ち寄ったり、自慢の種コレクションを寄贈する人もいます。「シードライブラリー」や「シードバンク」がある場所では、種の交換会が行われたり、ガーデニングや種採りのワークショップが開催されたり、種だけでなくさまざまな知識や技術が交換できる場所になっています。

種を地域のコミュニティで分かち合う仕組みは歴史上はるか昔から存在してきましたが、近年になって、都市部を含む地域全体で種を共有するためのこうした仕組みが、あらためて世界で広まりを見せています。こうした種を地域で共有する仕組みは単なる種の供給源であるだけではなく、地域の自然と大地、そこに住む人々、そして植物の関係性を育む機能を持っています。

日本国内では、全国に「種BOX」を設置しているShare Seed(シェアシード)さんの取り組みが代表的です。また、私も2年前に国際シードライブラリーネットワークと協力して、全国のシードライブラリー・シードバンクを地図上にマッピングするプロジェクトに協力させていただき、現在60以上の拠点が登録されています。

●シードライブラリー ネットワーク

https://www.seedlibrarynetwork.org/explore-the-map.html

●たねで繋がるコミュニティ(たねコミュ) Seed Communities in Japan

https://www.instagram.com/seedcommunity_japan/

おりしも昨日は私の地元のバークレーの街で、全米で最初に誕生したシードライブラリーにて今年25年目となる種の交換会が開催されました。地域の人々が自慢の種を持ち寄り、種や種にまつわるストーリーを交換しあうので会場は熱気を帯びていました。ライブミュージックの演奏や軽食が提供されるほか、種やガーデニングにまつわるワークショップも開催され、毎年非常に賑わっています。

訪れる人の中には地域の農園に関わる人や家庭菜園を行う人々、レストランや食育プログラムのある学校の関係者も多く、さまざまな人がゆるやかに連携しながら地域の植物を育んでいることを実感できます。

シードライブラリー

シードライブラリーは全国各地にある。

 

植物が人をつなぐ

植物は、太陽の光や、流れる水に空気、地中の微生物、虫、鳥、動物など、さまざまな存在と繋がり合いながら生きています。そんな植物たちは、異なるもの同士を「つなぐ」役割があるように感じることがあります。

私たちが植物を育てる時には、その繋がりあった自然界の循環に参画することができ、植物を通じて私たちの暮らしと自然界の繋がりが橋渡しされます。ハーブとしてその植物を身体に取り込む際には、私たちの心・身体・マインドと自然界のリズムの間に深い繋がりが生まれます。また、その植物や種を周囲の親しい人や地域と分かち合うことで、その繋がりの輪はさらに広がります。

この春、ぜひ植物を暮らしの中に取り入れながら、一歩深い自然界との繋がりを感じてみてください。

種の交換会のようす。

 

 

次回は4月6日(月)配信予定です。お楽しみに!

ウィーバー佳奈さん 

植物研究者(民族植物学・環境学)。東京大学とオランダ・エラスムス大学で修士号を取得、カリフォルニア大学博士課程で環境学・生態学・民俗学を横断的に研究。2015年よりアメリカで暮らし、ネイティブアメリカンのコミュニティから伝統知を学ぶほか、アフリカ・中米・欧州などでのフィールド経験を持つ。現在は大学を退き、ハーブによるセルフケアやウェルビーイングをテーマに、SNS、YouTube、雑誌、講演などで発信。科学と伝統知、感性の両面から植物の魅力と可能性を伝えている。

 

●Seed from Earth hhttps://www.seedfromearth.com/
●Instagramアカウント @seedfromearth

おすすめ記事

取材先で思わずハワイ気分!? 青い海と青い空を眺めながら、自然のもつ浄化パワーに癒されました

こんにちは、編集部Tです。 まだ6月だというのに、こんなに早くから暑くなるものでしたっけ!? 夏の到来がじりじりと迫るな …

「セラピーワールド東京 2025」特別セミナー、待望の初登壇!

今年、7回目の開催となる「セラピーワールド東京 2025」(10月24日・金、25日・土開催)。 毎年、業界やジャンルの …

パートナーシップの心理学で、女性が幸せになる方法を解き明かす!『女子の最強幸福論』7月31日(火曜)にイベント開催!

同性婚や事実婚がどんどん認められるようになり、 男女の役割も自由になってきている今。 皆が、自分らしい幸せの形を模索する …

新刊&新作DVD