「医者でなく患者自身が選択する医療へ」
ホリスティックナース座談会

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セラピスト6月号「ホリスティック医学超入門」特集にて掲載した、「ホリスティックナース座談会」。看護師の立場は、医師とセラピスト、西洋医学と補完代替療法をつなぐ存在としてとても重要です。ホリスティックナースの3人が始めた「ヘルスコーディネーター事業」は、未来の医療のあるべき姿について考えるための大きな布石となりました。今回は、事業に行き着くまでのより詳しい経緯や、どう意識を変えるかという深い部分について、その未公開部分の話をまとめました。

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自然治癒力の大切さに気づいた、それぞれの転換点とは?

Q 皆さんがホリスティック医療・統合医療に可能性を感じたきっかけは何でしょうか?

高野綾子さん(以下、敬称略) 私は看護師になった当初、大学病院で心臓の病棟にいたのですが、延命が第一の現場で、行き過ぎた西洋医学に疑問を感じたんです。でも、そう思うことにも罪悪感を感じました。モヤモヤしていく中で、医療が足りないところに行ってみたいと思いセネガルに行きました(詳しくは本誌にて)。

 

萩原千景さん(以下、敬称略) 私の転換点は、深い潰瘍を患っていた方が統合医療を実践して大きく改善していく姿を目の当たりにしたことでした。「これだけの量のステロイドを飲んでいる人が、減量して状態が良くなるなんて!」と衝撃を受けました。私たち医療者が考えてしまう「この疾患なら、この状態がベスト」という意識が完全に崩壊しました。

小川美農里さん(以下、敬称略) 私は元々アーユルヴェーダや東洋医学に関心があったのですが、最初は西洋医学の病院で働き始めました。その時、西洋医療のアプローチは身体的なところに特化していると感じました。それが顕著だったのがICU(集中治療室)にいた時、救急から薬を多量内服した自殺未遂の方が来た際のことでした。日常生活の動作ができたことと、心療内科にかかりつけ医がいるということで、そのまま翌日に帰していました。身体だけ治しても意味がないということが、西洋医療の現場で頻繁にあり、社会的な部分も含めて、ホリスティックなアプローチというのが大事だとより実感しました。

もう1つのきっかけは、インドでのボランティア経験です。村の人たちに整体をしていた際、私の顔を見る度に痛みを訴えられて、根本的な治癒にはつながらないと悩んでいました。その時出合ったクラニオセラピー(※)で、施術者の意図をできるだけ入れない優しいタッチの手技療法をした際、初めて患者さんの「治りたい」という力を認識できました。患者さん本人もそれを認識できたようで、それからは私を見て痛みを訴えるということがなくなりました。そうした経験を積み重ねて、自然治癒力は“医療者がコントロールしてあげる”というものではないと感じました。

萩原 患者さんの自然治癒力をサポートするということを、なかなか普通の病院ではやりませんよね。患者さんが“自分で治していくんだ”という意識にもっていくことが、私たちができるサポートではないかと思っています。

高野 「今までどのような生活をしていて、どんなことがあって、なんで病気になったのか」と患者さん自身で考えて「病気が治った時に、どう生きたいか」を見つける。そのお手伝いをすることが、私たちのやりたいことですね。

患者自身が治し方を見つけるための事業へ

Q 患者さんが「自分で自分を治す」という意識を持つことが大事なんですね。そのためにできることは何でしょうか?

萩原 意識を変えていくのはとても難しいことだと、クリニックで働いていて思います。大事なことですが、だからこそハードルが高いと思うので、その点を大切に考えて相手の人に関わることができたらいいなと思います。時間はかかりますよね。

高野 その人のタイミングもあると思います。自分の内側を見ていくのは、すごく苦しいことです。そして、患者さんがこうすると決めたら「見守る」というのもセラピストや医療者側の役割だと思います。

小川 それは今取り組んでいる「ヘルスコーディネーター」の事業にとっても、とても大事なことですね。“治すことを目的にしない”ということ。こちらの意図が入りすぎてしまうと、その人の気づきや成長の機会を奪ってしまうことになります。

萩原 そうですよね。総合医療のクリニックで働いていても、「あ!やっていることは以前と一緒だな」とふと思った時があって。提供しているものは西洋医学よりはその人に即したことをやっているけれども、結局、統合医療に依存させるような関係性を自分も作ってしまっているかもしれないと。そこの根元を変えていけると、私たち医療者側も患者さん側も、本来目指しているところに近づけるのかなと思っています。私たちも学びが必要ですね。

セラピストもチーム医療として同じ意識を!

Q セラピストが医療に関わる際には、何を意識したらよいでしょうか?

高野 私を含めてセラピストも、医療者と同じくこの意識の問題に気をつけることが必要だと思います。「治してあげたい」と思っていると、依存関係になってしまうので。西洋医学的なフォローとしてのドクターが定期的に見てくれるので、その横でセラピストにできる代替療法の提案をすると、医療者も頼りたいと考えると思います。

小川 連携したいと言っているドクターもいらっしゃるので、その全国的なネットワークを私たち3人が今できる限りつないでいます。日本ホリスティック医学協会も、「認定療法士制度」というのを作り、年に2回の症例検討会を行っています。例えば、リフレクソロジストの荻野麻里さんが症例について発表して、それに対して先生たちから意見をもらうなど、取り組みが少しずつ始まっています。これからはセラピストも、ホリスティック医療のチームメンバーだという意識だと良いのではないかと私は思います。

高野 もう1つ、「自分が治した」と言う方がたまにいますが、そうではなくて「患者自身で治った」という意識が大事だと思います。これは医療者にも言えることで、目の前で人が良くなっていくと「私のおかげで良くなった」と思いがちなんですが、その人が治るタイミングで自分が関わらせてもらったという視点を忘れずにいたいと、自戒を込めて思っています。

萩原 やっぱり結局は、「自分が治してあげる」という意識を関係者が一度外す気持ちをもつことで、ホリスティック医療の提供に繋がっていくのではないかと思うんです。それを徹底して、みんなが同じ意識でチームとなることがやっぱり大事なのかなという気がします。それはつい忘れていってしまうものだから、定期的にチームのみんなで時間をもつようにしたいですね。

ーーホリスティックナースの皆さんは、患者本人の自然治癒力が向上したことをきっかけに、「患者自身が自分で自分を治す」意識を持つことの大切さを実感していました。個人セッションを実施するなどの「ヘルスコーディネーター事業」や個々の活動を通じ、これからもホリスティック医療の発展に力を注いでいます。

※クラニオセラピーとは…頭蓋骨(クレニオ)と仙骨(セイクラル)をつなぐ硬膜(脳の外側の膜)を介して脳脊髄液が全身に循環するというメカニズムをもとに、軽いタッチを行うことで、自律神経の乱れや、身体の緊張、歪みへアプローチする手技療法。また、文中で実施されたのは、クラニオセラピーのうちダイナミクス・モデルの「バイオダイナミック・クラニオセイクラルセラピー」。

プロフィール

萩原千景さん北海道を中心に活動するホリスティックナース。「響きの杜クリニック(産婦人科)」で看護師として在籍。統合医療を実践、発信する「ひびきの丘プロジェクト」事務局担当。西谷雅史院長とともに運営に携わる。

高野綾子さんホリスティック医学の第一人者である帯津良一医師の病院で2018年より現場経験を積む。5月より山梨県北杜市へ移住し、地域おこし協力隊として、ホリスティックウェルネスツーリズム事業を立ち上げ予定。

小川美農里さん福島県西会津町にある体験型宿泊施設・ダーナビレッジの代表。認定療法士一期生。有機認証農場・チャルジョウ西会津農場代表。 看護師、保健師。 世界をより良くするために、グローカルに活動中。

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    第2特集では、クリニックで医師とともに働くセラピストの活動を通して、“ホリスティックな医療”の“最新情報”をお届けします。

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