【医師監修】セラピスト10月号 読書セラピー DL特別付録「〝書く〟治療 認知行動療法ワークシート」の使いかた

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「セラピスト」10月号はご覧いただきましたか? 表紙の雰囲気もいつもとひと味違い、読書の秋に「本の癒し」をお届けしています。
第2特集の「心に処方する 読書セラピー」では、読書療法学会会長・ビブリオセラピストの寺田真理子さんのナビゲートで、イギリスでは政府に公認され、イスラエルでは国家資格もある「読書療法(ビブリオセラピー)」の世界をご紹介しています。

特集の最後には「読む」と対になる「書く」治療法として、医療法人社団泰明 銀座泰明クリニックの院長・茅野分医師の監修により、書き込み式の認知行動療法ワークシートをダウンロード特別付録としています。雑誌内のQRコードもしくはこちらからダウンロードしてお使いください。

本記事では、ワークシートの使いかたを解説します。実際にセラピストさんにありがちな悩みをシミュレーションをしながら「書く」治療の心理的効果を体感いただければ幸いです。

まずダウンロードしますと、このようなPDFファイルのシートとなっています。プリントアウトして何度でもお使いいただくことができますし、スマホやタブレットで直接書き込んでもOKです。

シートは、このように7項目に分かれています。認知行動療法では7コラム法と呼ばれます。このシートへ記入していくことで、自分の思い込みや捉え方・物の見方などのクセ(「認知の歪み」)に気づき、修正していくというワークです。書き方のコツも記載していますので、ぜひ試してみてくださいね。

構成◎本誌編集部

ワーク:主観的な出来事・気分(感情)・自動思考を見える化

本記事では、順を追って書き方をシミュレーションしていきます。こんな効果があるんだ、と心の変化を体感いただければと思います。

 

さて、まずは「主観的」にあたる3つの項目からです。この3つの項目を書き出してみるだけでも効果的ですので、7項目、シートを埋めるのは大変そう、と思う方は、まずはこの3項目だけからでもやってみることをお勧めします。

(1)状況:5W1Hで情景が浮かぶくらい具体的に

今日、施術中に、お客さまへ何度かお声がけをしたが、あまり反応がなかった。圧や強さの加減がお客さまに合っているか、心地良く感じていただけているか、より良い施術をご提供したい気持ちでお声がけした。
施術後の会話も弾まず、クロージングをしたが、次回のご予約もいただけず帰られてしまった。

(2)気分:気分を一語で表し、%表示する。合計が100%にならなくても構わない
悲しい 90%、自己嫌悪 60%、無力感 70%

(3)自動思考:反射的・瞬間的に頭に浮かんだ考え、気持ちや記憶、イメージなどを、主語をつけて能動系で書く。書き出し終えたら、ひととおり見て、もっとも心が強く動いたものに「◎」印をつける

・お客さまは、私の施術にご満足くださらなかったんだ
・セラピスト歴3年。今日も私はリピートに繋げられず凹む
・このサロンは、私には合わないのかも。やめようかな
・子どもの頃に、私は学級委員を一生懸命頑張っても報われなかった。誰にも感謝されることなく空まわりしていた
・プライベートで彼に尽くしても素っ気なくあしらわれた
◎私はどうせどんなに頑張っても無駄。どうせ軽んじられて終わるだけ。

書き出していくうちに目の前の施術や接客のことから、子どもの頃の傷つきやプライベートでの体験まで思い起こしていることがわかります。
文字にして書き出すうちに、その背景にある過去の傷つきやトラウマ、体験、感情などが、まるで芋づるのように引き出されていきます。これを文字にすることそのものに心理学的・医学的な効果があります。メタ認知といって、自分から離れて俯瞰することができるのです。よく「自分を冷静に客観視せよ」などといわれますが、手放しでは難しいもの。ぜひこういったツールを活用しましょう。

ワーク:客観的な視点で「認知の歪み」に気づく

次に(4)〜(6)の客観的な項目へ進みます。

(4)根拠:「(3)自動思考」の根拠を挙げます。冷静、客観的に事実を認識していきます

・先輩はお客さまと会話が弾んでいるし、リピーターを得られている
・私が口下手なせいで、先輩のような会話ができず、リピーターにもなってもらえない
・私は施術は好きだけれど、会話が苦手
・先輩は施術も会話も上手。かなわない
・昔から私はそう。仕事も勉強もプライベートも人間関係だって何だってどんなに頑張っても報われないダメな人間

このあたりまで書き進めたところで、他者と自分を「比べる」ことで、必要以上に落ち込んでいる自分に気付き始めるのではないでしょうか。
なお、最後の一文は認知の歪みセラピスト本誌に10の例を挙げています)の典型例です。「ひとつのことを広げて捉え、一事が万事」と捉えてしまう、心理学用語で[拡大解釈][過度の一般化]、「自分はダメだ」とネガティブに思い込む[レッテル貼り]と呼ばれる認知の歪みが見受けられます。

ワーク:「認知の歪み」を修正して適応的な思考を手に入れる

(5)反証:「(3)自動思考」と矛盾する事実を挙げます。ネガティブな思い込みと相反する事実を思い起こすことで、視界が開けてきます

・少ないながらも、私の施術に喜んでくださりリピートしてくださるお客さまもいる
・私を指名してリピートくださる数少ないお客さまは、もともと寡黙な方が多い
・先輩は「セラピストが話上手である必要はない。お客さまのお話を聞くこと」とおっしゃっていた
・学校で掃除が上手と褒められたことがあって、いまのサロンでも私が片付けや整理整頓をして清潔を保つことで、店長から「みんな、あなたのおかげで気持ちよく仕事ができるよ。ありがとう」と言われたこともあった

(6)適応的思考:「(4)根拠」と「(5)反証」を「しかし」でつなぎます

・「私が口下手なせいで、先輩のような会話ができず、リピーターにもなってもらえない」しかし「先輩は「セラピストが話上手である必要はない。お客さまのお話を聞くこと」とおっしゃっていた
・「私は施術は好きだけれど、会話が苦手。先輩は施術も会話も上手。かなわない」しかし「私を指名してリピートくださる数少ないお客さまは、もともと寡黙な方が多い」

ここまでいくと、だいぶ客観的に見られるのではないでしょうか。
お客さまのタイプによって、セラピストとの相性もある。リラックスしたいからこそ話さないお客さまもいる。ましてや、目の前の出来事は、幼い頃や過去の経験とは異なること。
(ただしトリガー=引き金になる出来事や、結びついている過去の記憶やトラウマに気づき、それが現在の自分へ悪影響を及ぼしているとすれば、それを治療していくのも、認知行動療法のひとつです)

(6)気分の変化:最後に気分の変化を数値化して記します

私は私。先輩は先輩。良いところは見習って、自分の長所も大切に頑張ろう 90%、まだ沈黙が怖いかも 20%、気持ちを切り替えよう 60%

以上のように、自分の心のクセ=認知の歪みに気づき、それが何か仕事やプライベート、人間関係などにおいて支障になっているとすれば、修正していく。
「書く」治療の効果を、あなたもぜひ体感してください。本誌へは、さらに習慣化するヒントも掲載しています。実践していただけると嬉しいです。

https://www.therapylife.jp/pdf/therapist2510_worksheet.pdf

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    第1特集:リラクゼーションは、心と身体の“最良の薬”
    第2特集:心に処方する 読書セラピー

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