〝未病を治す〟アプローチの「リラクゼーション」は五感への問いかけ

投稿日:2025年11月6日


「未病」という言葉が、医療だけの領域ではなく、セラピーやウェルネスの現場で日常語のように使われるようになりました。症状が出る前に、心身の小さな「違和感」を整えておくこと。五感や声、香りやタッチといった“非言語の技術”が求められているのは、まさにここです。科学の言葉だけでは十分に救いきれない小さなサインを、セラピストという職能だけがすくい上げられる場面が増えていると感じています。

セラピスト10月号では「〝未病を治す〟アプローチ リラクゼーションは、心と身体の〝最良の薬〟」を特集しています。

 

1)リラクゼーション総論

私たちの自律神経は、外界の刺激を絶えず読み取りながら、交感・副交感のバランスを調整しています。

ポリヴェーガル理論では、迷走神経の働きを軸に「安全/恐怖/シャットダウン」という3層の状態が説明されます。セラピーとは、この神経生理を“手”や“声”や“香り”で安全側に傾ける営みです。

五感は脳の前頭前野を介さず大脳辺縁系に直接届きます。だからこそ原因の言語化ができていなくても、深部の緊張はゆるむのです。

これは科学の知見であり、同時に「人は触れられた瞬間に、呼吸と心がほどける」という、セラピストなら誰もが知っている現場のリアリティでもあります。

 

2)香りとタッチで未病ケア

柑橘の香りが廊下に漂ったとき、慌ただしい現場の空気がやわらいだ——その体験から、看護師としての道すがら、アロマと医療をつなぐ探求を始めた人がいます。集中治療室での無力感、与薬以外にできることがないという焦燥。そのなかで「香り+手」が患者の呼吸を変え、硬縮した指の動きを戻し、患者が「今日はアロマの日ですね」と口にするようになる。言葉や理屈を超えて、触れることで「大丈夫です」と伝える技術。末期がんの方が、施術の途中でただ静かに涙をこぼした場面。

そこには、科学論文には書かれない“質の回復”があります。

未病とは、症状の前段階だけではなく「その人の dignity(尊厳)」が保たれているかどうかでも測れるのだと、私たちは気づき始めています。

 

3)声のトーン、声色で未病ケア

声は、もっとも原始的な振動の楽器です。

ファーストコンタクトの「こんにちは」の一音で、クライアントの迷走神経は安全か危険かを判断します。

ボイスセラピーの現場では、チャクラと呼ばれる7つの“エネルギーポート”に対応したトーンを調整していきます。たとえば第1チャクラなら「オ」で勇気と現実感覚、第4チャクラなら「エ」で思いやりと優しさ。感情を押し込んで声が詰まっている層をひとつずつほどくと、声が変わる。声が変わると感情が動く。感情が動くと安全感が芽生える——この順番です。

施術前の声を整えるだけで、未病のラインを1つ手前で止められるセラピストは確かに存在します。

 

4)色・光・音で未病ケア

五感セラピーでは、脳波の「境界」を扱います。アルファ波とシータ波のあいだ、顕在意識と潜在意識がちょうど重なり合うゾーン。色彩心理、音響、光、アロマ、タッチを統合し、視覚から色を選択していただき、その日の香りレシピを設計します。

五感を3割しか使えていない人が、6〜7割へ戻る。感覚が戻れば、「本来の選択」ができる。紅茶の甘さに気づき、決断の迷いがほどける。箱根駅伝のアンカーを引き寄せたランナーのように、限界値そのものが書き換わる。その変化は精神論ではなく、脳疲労の回復という生理から説明できる現象です。

本稿で紹介したのは、セラピスト10月号「リラクゼーション」特集のほんの一部です。
本誌では、症例・科学根拠・技法手順などを、さらに具体的かつ科学的に掲載しています。続きはぜひ本誌で、ゆっくり受け取ってください。

セラピスト2025年10月号 好評発売中!

 第1特集:リラクゼーションは 心と身体の〝最良の薬〟
 第2特集:心に処方する 読書セラピー

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