セラピストのための予防医学とセルフメディケーション  楢林佳津美先生 × 星子尚美先生 特別対談

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withコロナの時代の中で、これまでとは変わってしまった日常と向き合う日々。人々の幸せと健康のために自然療法を提案するセラピストにとって、予防医学的な観点からセラピーを伝えることが必須の時代になりました。
日本アロマコーディネーター協会(以下JAA)では、この7月より新たに「予防医学とセルフメディケーション」の学習を加えたアロマコーディネーターの育成講座がスタートしています。
今回は、JAA主任講師の楢林佳津美先生、そしてJAAの医療顧問である医学博士 星子尚美先生に、これからのアロマのあり方と可能性について語っていただきました。
取材/提供 日本アロマコーディネーター協会

人々を取り巻く社会の変化の中での
アロマセラピーの可能性について

楢林

20年前、10年前と、その時々で感じてはきましたが、具体的な変化として感じ始めたのは5、6年ぐらい前からです。特に働く女性が増えたことで、家庭で料理をする時間を持つことが難しくなり、調理の時間短縮やコンビニエンスなものを求めざるを得なくなりました。そういった流れからか、アロマでも便利なグッズを、よく目にするようになりました。

精油について自ら勉強をし、どう使いたいのかを自分で考えるのではなく、眠れないのであれば「安眠ブレンド」という商品を買うことで良しとする傾向が、最近は多くあるのではないでしょうか。

香りを求める方が増えているのはとても嬉しいことですが、精油をじっくりと学び、自分の中に知識として蓄えていくといった流れが、薄れてきてしまっているのは寂しいですね。

精油の知識があれば、暮らしの中で予防的に活用することも可能になってきます。例えば月に1、2回の高熱で、定期的に耳鼻咽喉科や小児科に行くような状況の幼稚園ぐらいの未就学児のお子さんでも、ティーツリーやユーカリラジアタなどの精油をディフューザーで焚いたり、胸と背中にブレンドオイルを塗ってあげたりすることで、1ヶ月後にはもう病院に行かなくても良くなっているといったケースがあります。

薬を使って辛い症状だけを抑えるのとは違い、症状が現れる根本的なところや弱い部分にアプローチして、健康へと導いてくれることが、アロマが果たせる予防の一番のポイントだといえます。

もちろん、忙しい毎日の中で、時に利便性を重視することがあっても良いと思います。ただ、やはりご自身の体感から学ぶ、精油の知識や使い方の知恵を「予防」として生活の中で活かしていただきたいですね。

現代のメディカルアロマについて

星子

私が行っているメディカルアロマは、精油の成分含有量の規定があります。要は、この成分が何パーセント以上でないとメディカル用精油として認めないということです。また、これらの精油を使う際の濃度は3~10%、場合によっては20%ということもあり、かなり高濃度です。

エストロゲン作用のある精油を使って、女性特有の症状をケアしたいという方も多いと思いますが、例えばクラリセージという精油は、かなりホルモン作用が強く、使い方によっては、ホルモンのバランスを崩してしまいます。

アロマだから絶対に安全ということではないんですね。使い方を間違ってしまうと危険な場合も当然ありえます。そういったことを踏まえておくことが必要です。

楢林

厳密には精油を”メディカル“に使うのは、一般の方には無理だと思います。病気には「症状の出始め」、「ピーク時」、「症状の終息」と「その予後」があって、それぞれに状態が変わります。その状態に合わせて精油を使い分けるのは、一般の方には難しいです。

病気の人を少しでも早く楽にしてあげたいという想いで精油を使ってあげたとしても、逆に遠回りになる可能性もありえます。ですから、メディカルという言葉を安易に使ってはいけないと思っています。

アロマセラピーにおける
対症療法と根本的ケア

楢林

対症療法的な精油の使い方がいけないということではないのですが、「どうして頭痛になるのか?」その原因を自分なりに探っていく必要があると思っています。そうでないと、いつまで経っても頭痛から解放されることはありません。

アロマを便利な頭痛薬として扱うのではなく、頭痛にならないために、生活習慣から見直していくことも大切なんですね。

これは私の経験談なのですが、太もものマッサージをしただけで偏頭痛を誘発したケースがありました。血管が拡張するとそういったことも起こり得るので、マッサージをする前には必ずクライアントの方に「あなたは偏頭痛がありますか?」とチェックをするようにしています。

頭痛にも色々な種類があるので、自分がどのタイプの頭痛を持っているのかを理解しておくと、適切な精油や使うタイミングも分かってきます。

星子

人によって頭痛の原因が違いますからね。同じ精油でも「この人には良いかもしれないけど、この人にはダメ」というのもあります。精油の作用に惑わされるのではなく、自分の心身がどうあるのかを探り、適切な精油を使って健康増進に役立てて欲しいと思います。

環境問題と私たちの健康と

星子

2019年9月から多発化し、半年あまり燃え続けたオーストラリアの火災では、多くのユーカリやティーツリーの木が消失しました。これらの植物は、精油の原料でもありますから、今後、精油の抽出量にも影響が出るのではないかと心配しています。抗ウイルスや殺菌作用に優れ、感染予防に役立つ精油ですから、入手困難となれば、アロマセラピーを学ぶ人も、実践している人も困るはずです。

樹木の消失においては、アマゾンも同じで、無計画とも思われる木の伐採が進んでいます。植物が生えない場所には、動物も住めません。なぜなら、全て連鎖しているからです。

環境のことを真剣に考える必要があります。食物連鎖の頂点に立つ人間がどう生きるかによって、環境は大きく変わります。これからは、本質の世界になってきますので、やはり中身がどれだけ大事かということがわからないといけないと思います。

例えば、私たちの身近なところで言えば「農薬の問題」。野菜は無農薬で、形が悪くても、そっちのほうが栄養的には良いわけですよね。見た目を重視して、農薬をたくさん使って作物を得ることを続けていけば、それは土地の汚染、水の汚染にも繋がっていき、結果として私たちの暮らしに大きな影響を及ぼします。

楢林

星子先生のおっしゃる通りだと思います。世の中には、からだに悪いことが分かっている危険な食品も多く流通していますし、自然を損ねることが「ビジネス」という名のもとに、残念ながら施されていますね。

しかし、アロマセラピーを学び実践することは、植物や農業を介して、自然環境や社会の現状に意識を向け、学習することにも繋がります。結果として、自分はどういう行動を取るべきなのか、また社会の中でどうあるべきかを、考えるきっかけになると思います。

星子

「どのように人間が生きていくのか」これは環境問題にも、アロマセラピーの実践にも、共通のテーマだと思います。長生きして、すごく幸せに亡くなるっていうのが一番じゃないですか。そのために、どのような事をすればいいのかを考えて欲しいと思っています。

物の豊かさだけでは、人の幸せを作ることはできません。人や環境に対して優しく、そして温かな気持ちを持つことが、とても大事です。

楢林

人生、いつが自分にとって一番幸せな時で、終わりをどうしたいのか、どういう生活をしなくちゃいけないのか、ということを考えないといけないということですね。

星子

わたしは地球と人間のからだは、大宇宙と小宇宙みたいなもので、みんな繋がっていると考えています。

例えば、アマゾンの森林伐採は、人間の肺とその機能に影響を及ぼすということです。アマゾンの森林はたくさんの酸素を作っています。これを人間のからだに置き替えると、肺にあたります。

森林破壊が進めば、酸素を作り出す機能が低下しますよね。簡単に言えば、空気が汚れていくわけです。空気の汚れは、私たちの肺にもダメージを与え、喘息などの肺疾患を引き起こしやすくなります。さらに、人間のからだは70%が水分ですが、川や海を汚すということは、私たちを満たしている水分を汚すも同然です。

また、私たちの暮らしは多くの微生物の働きによって支えられていますが、腸の中にも微生物が何兆も存在しています。腸の微生物は意識を持っているのです。発生学的に、もともと人間は腸から始まっており、腸は第一の脳と言われています。

このように地球と人の繋がりは非常に深く、別物として考えることはできない関係性にあるといえます。

セラピストとして
「withコロナの時代/ニューノーマルな日常」
を生き抜くために

楢林

3密・外出自粛、これにより、アロマトリートメントができない状態でしたから、セラピストにしてみると手足を捥がれたような状態です。

少しずつ平静に戻ろうとしていますが、サロンワークを継続するなら、今まで以上に衛生面に配慮して、クライントに不安なくおいでいただくことが大事です。

また、サロンに行きたいけれど、今回のことがきっかけで、行くのを控えているといった方々に、オンラインで不調を聴いたり、改善するための提案を行ったり、デモンストレーションしながら、セルフケアを促すような取り組みも必要になるでしょう。

握手をするのもはばかられる今、これからは自分の健康は自分で獲得しなくてはいけない時代になるでしょう。

ニューノーマルな時代でも、信頼されるセラピストになるには、きちんと結果の出る知識・技術とそれを表現する術が必要のようですね。私も含め、試行錯誤しながらになると思いますが、多くの方が笑顔でいられる社会を目指して励みましょうね。

星子

今回のコロナの影響で、感染症の予防に対する正しい知識がいかに大事かということを、全ての人が感じていると思います。エビデンスもない新しい薬や対処法などが、逆にウイルスの暴走を招き、命が危険に晒されるということも出てきました。

今、人々は、正しい情報と知識を求めています。自然界でおこることは、自然のなかで解決することが重要です。

人間は、誕生してからずっとウイルスと共存共生してきました。その過程で、自然の力をいかに利用して、ウイルスに対抗できるかを学んできました。ウイルスを予防する、免疫力を高める、ウイルスを排出する、それらのことは長い経験の中で実証され、培われてきたものです。

正しい知識と対処法を身につけていれば、ウイルスとの距離感もわかっていき、必要以上に恐怖心を抱くこともなくなってきます。

アロマセラピーとは、自然の力を活かして、人間本来の自己治癒力を高め、あらゆる自然の現象に対処できるものということを再度認識して、人の為に思いやりをもって活用してほしいと思います。

今、人々の生活様式や意識が大きく変わってきています。必要としているものが手元にない場合は自分で作るということ、既存のものにあえて頼らず、自分でモノづくりを楽しむという意識が生まれてきています。

そういった時代の流れとニーズにも合わせて、アロマセラピーが多くの方に正しい形で伝わっていければと思います。

楢林 佳津美Katsumi Narabayashi

JAA日本アロマコーディネーター 協会 主任講師 (一社)日本アロマ膝ケア協会 理事 日本ブレスト協会 理事 鍼灸あんまマッサージ師 東京理科大学 東京医療専門学校卒業 アロマセラピーレシピ 自動決定ソフト「私のアロマセラピー」、「アロマセラピーケアガイド」、「アロマケア実用ガイド」等著書多数。雑誌や日本各地の講演活動で活躍中。

星子 尚美Naomi Hoshiko

星子クリニック院長 東京女子医科大学医学部 熊本大学医学部大学院卒業 全人的医療を目指した自由診療のみのクリニックを開業。がん、生活習慣病などの難病に苦しむ患者の治療と予防医学を行っている。 放射線科専門医、日本臨床抗老化医学会認定医、高濃度ビタミン点滴及びキレーション療法専門医、メディカルアロマ専門医などの幅広い資格を取得。東久邇宮国際文化褒賞授与(予防医学に貢献した等)。著書に『「平熱37℃」で病気知らずの体をつくる』『腸のことだけ考える』など。

『予防医学とセルフメディケーション編』

執筆・監修 医学博士 星子尚美 医師

■Chapter1
健康とは何か
・健康の定義/WHO世界保健機関憲章前文(日本WHO協会仮訳)
・健康の語源・健康と環境・健康の形
・健康になるための要因:Quality of Life

人生100年時代
・高齢化社会・健康寿命・センテナリアンに学ぶ生き方

現代人が抱える健康問題
・WHOファクトシート死亡原因トップ10
・日本の状況(死因順位と割合)

■Chapter2
自然環境と生活環境
人々の暮らしが与える自然環境への影響・環境が与える健康への影響(食・水・空気・土壌)・生活環境が与える健康への影響(衣食住・ストレス・運動不足・生活習慣の乱れ・活性酸素・電磁波)
Column:生きる力有機農法による農作物は健康増進に働く

免疫システム
腸管免疫・免疫寛容・免疫とアレルギー

低体温と免疫機能(癌と免疫)
低体温が免疫機能を破壊し、癌細胞を増殖させる・体内に癌細胞が発生する主な原因(DNAのエラー・発癌性物質・活性酸素)
Column:癌は温めることで死滅する

活性酸素とは(スーパーオキシド・過酸化水素・ヒドロキシラジカル・一重項酸素)
抗酸化物質について・体内で作られる抗酸化物質・体外から取り入れる抗酸化物質・活性酸素を増やす要因とは

■Chapter3
生活習慣と疾患の関係
サーカディアンリズム(生体リズム・概日リズム・体内時計)・Column:体内時計には5つのリズムがある・ストレスとは・自律神経とは・現代人の生活と自律神経の乱れ・自律神経が乱れる主な原因・ストレスマネジメント・自分に合うリラクセーション法を身に付ける・呼吸法(鼻呼吸・深呼吸)

腸内環境と疾患の関係
腸管は人体最大の免疫器官(腸管免疫)・腸内細菌(腸内フローラ・腸内細菌叢)
Column:ウンチの3分の1は腸内細菌!?
腸内環境悪化の要因(アルコール・医薬品・加工食品・タバコ)・腸脳相関(腸は「第二の脳」)・腸内環境(腸内環境が悪化する食事)・活性酸素の有害性・ストレスと活性酸素
Column:私が実践した癌との向き合い方/医師 星子尚美

■Chapter4
予防医学と未病
・予防医学の基本・自分の状態を知ることは予防の第一歩・未病の状態とは・東洋医学の特徴と西洋医学の特徴・冷えは万病の元・自律神経の乱れと冷え・血液と冷え・未病と向き合う・未病の改善・未病への取り組み方(アロマセラピー編)

病気にならないからだ作り
・セルフメディケーション・デトックス(体外に排出される老廃物や有害物質の割合)・デトックスをサポートする『睡眠』・デトックスと食事

メンタルケア
・メンタルケアが必要な状態・ストレスから身を守る4つのメンタルケア・メンタルケアに役立つ『笑い』の優れた効能

眠りは心と体のメンテナンスを行うための大切な時間
・1日に必要な睡眠時間・質の良い眠りのために必要なこと・メンタルケアと運動

平熱37℃
人間が生命活動を維持するために重要な酵素は37.0℃前後で最も活発に働く・低体温と未病・体温をアップさせて不調の原因を根本から改善・低体温と言う未病の先にあるもの・低体温改善とアロマセラピー(主な原因と改善策)
Column:低体温という未病

日本アロマコーディネーター協会は、アロマセラピーおよび関連する各種リラクゼーションの健全な普及を目的に1995年11月1日に発足。 人材育成と資格者の活動支援を行っている。常任理事は浅井隆彦。

アロマセラピー&資格取得については、お気軽にJAAまでお問合せください。

  • 0120-080-879
  • info@jaa-aroma.or.jp
  • JAA公式サイト jaa-aroma.or.jp
  • JAAオンラインショップ jaa-shop.jp
  • 〒171-0022 東京都豊島区南池袋1-25-9 今井ビル5F

   

予防医学のためのアロマセラピーが学べる「新アロマコーディネーター養成講座」は全国のJAA加盟認定校、およびJAA直轄校・日本アロマコーディネータースクールにて受講可能です。通学はもちろん、オンライン、通信などライフスタイルに合った学習形態からお選びいただけます。
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